加藤浩子の旅びと通信 第13回 オルガンをめぐる師弟のドラマ〜「バッハへの旅」オンラインツアーでご紹介するオルガン秘話

 こんにちは、musicaです。
 昨年12月に第1弾を実施した自宅で楽しむ音楽の旅、オンラインツアー「バッハへの旅」
 第2弾開催(8月16日)まで残り数日となりました! 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

こんにちは。加藤浩子です。
 「郵船トラベル」さんが主催する「バッハへの旅」そのほかの音楽ツアーで、同行講師を務めさせて頂いています。
 前回のブログで告知しました、オンラインで楽しむ「バッハへの旅」第2弾、いよいよこの16日に迫りました。
ツアーのテーマは「バッハとライプツィヒ」。音楽演奏動画もたっぷりお届けします。特別ゲストの鈴木雅明先生によるドイツの歴史的オルガンの演奏動画、そして今年のライプツィヒ・バッハ音楽祭から、バッハゆかりの聖トーマス合唱団による《クリスマス・オラトリオ》や、雅明先生が指揮するバッハ・コレギウム・ジャパンの《復活祭オラトリオ》の一部をお届けします。昨年暮れに実施したオンライン「バッハへの旅」第一弾より画質がぐんと良くなり、現地にいるような臨場感を味わっていただけると思います。





ナウムブルク、ヴェンツェル教会のヒルデブラントオルガン


 今回のスペシャルな企画の一つが、オルガン巡りです。バッハがライプツィヒ時代に鑑定したオルガンの中から代表的な名器をいくつかご紹介し、雅明先生に解説をいただく予定です。
そのうちの二つは、ツァハリアス・ヒルデブラントというオルガン製作者が建造したもの。ライプツィヒ近郊のシュテルムタールという小さな村の聖十字架教会にあるオルガンと、ナウルブルクのヴェンツェル教会にある大オルガンです。シュテルムタールの楽器は1段鍵盤のごく小規模なものですが、長三度音程が美しく響く「ミーントーン」で調律されており、鋭く美しい個性的な響きが楽しめます。
このオルガンは、バッハとヒルデブラントが知り合うきっかけを作った重要な楽器でした。1723年11月2日、新しくなった教会堂と一緒にこのオルガンが完成した時、バッハが鑑定をし、カンタータ194番《こよなく待ち焦がれし喜びの祝い》を演奏しているのです。教会には、その時にバッハが座ったと伝えられるベンチが残っています。
バッハはヒルデブラントの楽器を高く評価し、以来、ヒルデブラントはバッハのお気に入りのオルガン製作者の仲間入りをしたのでした。
ところがこの楽器は、ヒルデブラントの人生にとって重要なもう一人の人物との関係に、亀裂をもたらしてしまった楽器でもあつたのです。
ヒルデブラントのオルガンの師は、ゴットフリート・ジルバーマンと言います。1714年に完成させたフライベルク大聖堂のオルガンで世に知られるようになり、ザクセン選帝侯の宮廷オルガン製作者に就任。フライベルクに工房を構えて数々の名オルガンを建造し、大勢の弟子を世に送りました。1713年に弟子入りしたヒルデブラントは有望株の一人で、1718年にはレータというところにあるオルガンを一緒に制作しています。


シュテルムタール、聖十字架教会のヒルデブラントオルガン


 ジルバーマンは、ヒルデブラントの才能に気づいていました。ライバル出現と思ったのかもしれません。ジルバーマンは、ヒルデブラントが自分の工房での修業を終えた時、彼がザクセンで単独で新しいオルガンを建造するのを禁じたのです。ヒルデブラントを自分の工房に引き留め、彼が自分と競合しないようにするためでした。
しばらくは、ヒルデブラントも大人しく師に従い、師と一緒にオルガンを作っていました。けれど、ヒルデブラントにも自負があったのでしょう。シュテルムタールのオルガン建造の依頼を一人で受けてしまったのです。
怒ったジルバーマンは、ヒルデブラントを訴えるという挙に出ました。ヒルデブラントとは活動地域を制限されてしまいますが、バッハは彼の味方でした。ヒルデブラントはバッハが住んでいたライプツィヒに引っ越し、バッハは彼にいくつか仕事を斡旋しています。
最終的に師弟を仲直りさせたのも、バッハの功績です。1743年にヒルデブラントが、ナウルブルクのヴェンツェル教会の大オルガンを完成させた時、バッハと一緒にジルバーマンが鑑定に招かれていたのです。バッハが仲立ちをしたことは確実でしょう。
以後、師弟の共同作業は復活しました。ドレスデンの宮廷礼拝堂(カテドラル)の大オルガンはジルバーマン最晩年の大仕事ですが、死を前にして体が弱っていたジルバーマンは、ヒルデブラントに自分の後釜として製作を監督してくれるよう頼み、ヒルデブラントもそれを受け入れたのでした。


シュテルムタール、聖十字架教会にある、バッハが座った椅子


シュテルムタールのオルガンも、ナウムブルクのオルガンも、実際の「バッハへの旅」で訪れ、鑑賞するオルガンです。教会のオルガンは、日本では絶対に体験できないもの。動かすことはできませんし、その場で、それが取り付けられている教会で聴いてこそ価値があります。今回のオンラインツアーでは、(この二つではありませんが)バッハと関係が深い歴史的オルガンの響きを、ゲストの鈴木雅明先生の演奏動画で味わっていただきます。
ツアーの詳細、お申し込みはこちらからご覧ください。

https://www.ytk.jp/music/feature/bach_online_210816.html



最後までお読みいただきありがとうございます。
オンラインツアーは、ライブ配信と見逃し配信(アーカイブ配信)の両方で配信されます。
当日ご都合がつかない場合も、ツアー終了後10日間じっくりとご覧いただけますので、
ぜひご参加ください。


◆書籍のご紹介◆
「バッハ」(平凡社新書)
「バッハへの旅」(東京書籍)

加藤浩子氏プロフィール&過去ツアー実績、著書等の紹介はこちらから


「バッハへの旅」ツアーのことをもっと知りたい!という方は、
特集ページもぜひご覧ください。


旅の最新情報をキャッチ! ぜひご覧ください♪

音楽・美術の旅 facebookページ
https://www.facebook.com/yusentravel.music
音楽・美術の旅 Twitter 
https://twitter.com/YTK_Music
音楽・美術の旅 メルマガ(月2回配信)
https://www.ytk.jp/mailmagazine/
音楽・美術の旅 トップページ
https://www.ytk.jp/music/


投稿者名 musica 投稿日時 2021年08月13日 | Permalink