加藤浩子の旅びと通信 第8回  たかがドレスコード、されどドレスコード

こんにちは、musicaです。
郵船トラベルの講師同行ツアー「バッハへの旅」「ヴェルディへの旅」
などでおなじみの、加藤浩子氏による特別寄稿、第8回目をお届けします。

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こんにちは。加藤浩子です。
 「郵船トラベル」さんが主催するツアーで、同行講師をさせていただいています。
「郵船トラベル」さんのメールマガジンの場をお借りして発信している「加藤浩子の旅びと通信」、第8回目の今回は、海外でオペラやコンサートを鑑賞する際の「ドレスコード」についてお話ししたいと思います。


グラインドボーン音楽祭 会場


 「この劇場では、何を着たらいいんでしょう?」
 オペラ、音楽ツアーの説明会の席で、必ず出てくるご質問です。
 ごもっとも。海外の、それも初めて訪れる劇場や音楽祭だったりすると、何を着ればいいか気になりますよね。日本人は周りから浮くことを気にする方が多いですから、なおさらです。
 ふだんオペラに行く機会のない方や、海外での鑑賞が初めての方は、ロングドレスやタキシードを準備しなければならないのでは?と考えてしまいがちです。ずいぶん前ですが、ハリウッド映画「プリティ・ウーマン」にも、ヒロインの娼婦が、恋人のお金持ちに連れられて、自家用ジェット機に乗り、タキシードにロングドレスでオペラ《椿姫》(娼婦が主人公のオペラ。わかりやすいですね)を観に行く場面がありました。アクセサリーは、片手で持つ金色のオペラグラス。主演の二人はリチャード・ギアとジュリア・ロバーツでしたから、それは格好良かったですが。
 オペラを観に行くなら、ああいう格好をしなければならないのでは?
 そう思っている方は、まだ少なくないようです。オペラ=とびきりの非日常、というイメージなんですね。
けれど、日本で実際にオペラ鑑賞に出かけている方ならご存知のように、今どきのオペラ公演ではノーネクタイ、ノージャケットはごく普通。おめかしをしている方もありますが、基本はかなりカジュアルなように感じます。足繁くオペラ公演に通われるファンの方にとっては、オペラは「日常」になっています。


ザルツブルク音楽祭 メイン会場の祝祭大劇場


ザルツブルク音楽祭 会場のひとつ、フェルゼンライトシューレのホワイエ


ザルツブルク音楽祭 2017年の話題公演、《皇帝ティトの慈悲》カーテンコール


では、海外のオペラハウスや音楽祭はどうなのでしょうか。
 これはもう、ケースバイケース、場所や機会によって様々なのですが、やはり、オペラや音楽祭が「日常」なのか「非日常」なのか、という点は大きいです。例えばミラノのスカラ座は、普段はカジュアルな装いの方も散見されますが、シーズンオープニングの日はみなさんとびきりの装いで現れます。その日はスカラ座が「社交界」の最高の役割を果たす日だからです。
 かつて、オペラはヨーロッパでも「非日常」の「社交場」でした。もともとが宮廷芸術ですし、19世紀のオペラハウスはブルジョワ階級の最高の社交場でした。20世紀に入っても、マリア・カラスが活躍していた世紀半ばごろの公演映像などを見ると、客席は申し合わせたようにロングドレスとタキシード。舞台上の歌手のドレスが地味に見えるほどです。
けれどそれから半世紀以上経って、オペラの世界もかなりカジュアル化が進みました。一部の有名オペラハウスは観光名所にもなっているので、地元民より観光客が多いような公演もあり、そんな時は特にカジュアルな方が目立つような気がします。
 カジュアル化の賜物でしょうか、個人的には、カジュアルな服装で出かけて失敗したという経験より、おめかししていったら浮いてしまったという体験の方が多いのです。けれど、そうやって経験を積むうちに、その国の文化に対する考え方とか歴史が見えてくることがあります。たかがドレスコード、されどドレスコード、なのです。


バイロイト音楽祭会場


バイロイト音楽祭会場 建物は簡素だが、音響は抜群


バイロイト音楽祭会場 休憩中の風景


ロンドンを代表するオペラハウス、ロイヤルオペラハウス 外観


ロンドンを代表するオペラハウス、ロイヤルオペラハウス 客席


ロイヤルオペラハウス ホワイエでくつろぐ地元の観客


オペラ=非日常。
そういう世界は、もちろんまだまだ残っています。
代表的なのは、前にあげたスカラ座のシーズンオープニングや、一部の夏の音楽祭。夏の音楽祭の代名詞ともいえるザルツブルク音楽祭や、ワーグナーが設計した劇場でワーグナー・オペラを上演するバイロイト音楽祭などは、歴史も長く、今なお非日常な「社交場」の世界です。ブラックタイにロングドレスが行き交うなかに身を投じるのは、それはそれで愉しいもの。
もっとも、不慣れというのは恐ろしいもので、ある時ザルツブルク音楽祭で、劇場のホワイエの階段を上りながら、はきなれないロングスカートの裾を何度も踏みつけていたら、後ろにいた現地の若い女性が、「こうするのよ〜」と裾をたくし上げて階段を上る方法を教えてくれました。汗。

音楽祭のフォーマル感と非日常感を味わえるとっておきの音楽祭は、イギリスのグラインドボーン音楽祭です。
会場は、貴族のマナーハウス。オペラ好きの貴族が自宅に劇場を作って始めた、いわば個人の道楽で始まった音楽祭ですが、今やヨーロッパの夏を代表する音楽祭の一つになっています。
とにかく、この会場が非日常。広々とした庭園は、そのまま牧草地に続いていて、「ピクニック」と呼ばれる屋外での食事を楽しむ人で賑わいます。その「ピクニック」を楽しんでいる人たちが、タキシードにロングドレスなのです。開演1時間以上前から会場に到着して庭を散策し、1時間ある休憩時間でのんびり食事を取り、終演後も庭やバールで余韻を楽しむ。もちろん顔馴染みとのお喋りを交えながら、丸1日をここで過ごすのです。これこそ夏の、正統な社交場といえましょう。これも、身分社会、貴族社会が色濃く残るお国柄ならではです。


グラインドボーン音楽祭 ホワイエ


グラインドボーン音楽祭 ピクニックの風景


一方で、年間を通して公演をしているオペラハウスのシーズン中の公演は、カジュアルな服装が目立つご時世になりました。
「ライブビューイング」が人気のニューヨークのメトロポリタンオペラ(ライブビューイングの映像で、客席がカジュアルなのに驚く方もいるようです)をはじめ、ウィーンの国立歌劇場、ミラノのスカラ座、ロンドンのロイヤルオペラハウスのような大劇場から、ドイツの地方の劇場まで、シーズン中の公演はカジュアルな装いの方が主流のように感じます。


メトロポリタンオペラ 正面


メトロポリタンオペラ 客席


メトロポリタンオペラ ホワイエ


特にカジュアル化が著しいのはフランスです。数あるオペラハウスの中でもとびきり豪華な建物を誇るパリ・オペラ座(旧オペラ座、ガルニエ宮)では、大理石やシャンデリアで飾り立てられた宮殿のような劇場には不釣り合いと思われるくらい、ジーンズやスニーカー姿の観客が目立ちます(もちろん、お洒落な方もいるのですが)。パリの下町と言えるバスチーユ広場に建つ、現代建築の代表格である新オペラ座(オペラ・バスチーユ)に至っては、劇場のモダンな空間も相まって、オペラハウスというより街の通りの一角にいるような気分になることもしばしばです。
かなり前にパリ・オペラ座が来日した時、協賛したテレビ局で特番を組んだのですが、その中で女優さんがパリで衣装をあつらえてオペラ座に行くシーンがありました。ところが、訪れたオペラ・バスチーユの観客層はポロシャツのようなカジュアルな服装が大半。豪華なイヴニングドレスが、浮いてしまっていた記憶があります。


パリ、旧オペラ座 シャガールの天井画


パリ、旧オペラ座 豪華なホワイエ


パリ、旧オペラ座 観客席


パリ、新オペラ座 外観


パリ、新オペラ座 ホワイエ


パリ、新オペラ座 客席 音響は抜群


私自身、リヨンのオペラハウスで似たような経験をしました。
フランスのオペラハウスのドレスコードがカジュアルなのはわかっていたのですが、その日はシーズンのオープニングだったのでロングスカートをはいて行ったら、これが大失敗。誰一人として、ロングスカートをはいている女性などいません。お隣に座った若い男性はジーンズにスニーカーで、席につくやいなやリュックサックをどさっ!と前に置く始末。終演後のプレス関係者のパーティで会ったパリ在住のジャーナリストに愚痴をこぼしたら、何言ってるの、ここはフランスだよ、とたしなめられてしまいました。笑。
フランスという国は、芸術は日常的なものという考え方が強いのです。あのフランス革命を起こし、すったもんだのあげくに共和制を打ち立て、内実はともかく平等を謳う国の立ち位置もあるような気がします。バスチーユ・オペラ座を計画、建設した当時の大統領ミッテラン氏の考えは、全ての市民にオペラを、だったのですから。
とはいえ、フランスを代表する夏の音楽祭であるエクサンプロヴァンス音楽祭では、そんなフランス人のお洒落な面に出会えます。エレカジ、というのでしょうか、ノーネクタイでもシャツやパンツも洗練されているし、時にポケットチーフを挿したりして、とてもお洒落なのです。ここもまた社交場も兼ねて始まった音楽祭なので、それなりにハイソな客層が残っているのでしょう。


リヨン、オペラ座


リヨン、《マクベス》のモダンな舞台


ドイツのオペラハウスもカジュアル化が進んでいますが、都市によっても相当違います。南部を代表する大都市ミュンヘンは、富裕層が多いのと、カトリックが多い町であることもおそらくあって、かなりドレッシーです。長いあいだバイエルン王国の宮廷所在地であり、劇場(バイエルン州立歌劇場)のルーツが宮廷劇場であることも、関係しているかもしれません。
これが、北ドイツを代表する都会ハンブルクだと、同じドイツの富裕な都市のオペラハウス(ハンブルク州立歌劇場)でもぐっとカジュアルです。ハンブルクが商業で繁栄した「市民」の街で、オペラハウスも市民のための公開劇場としてスタートしていること、そして、質実剛健なプロテスタントの街であることなどが、関係しあっているような気がします。

たかがドレスコード、されどドレスコード。時に失敗しながら、時に感嘆しながら感じるその背景は、なかなか深いものがあるのです。


ミュンヘン、バイエルン州立歌劇場


ミュンヘン、バイエルン州立歌劇場 豪華なホワイエ


ミュンヘン、バイエルン州立歌劇場 カーテンコールの客席


加藤浩子の旅びと通信 第8回 いかがでしたでしょうか? 
今後は月1回ペースで配信の予定です。


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投稿者名 musica 投稿日時 2020年08月31日 | Permalink

加藤浩子の旅びと通信 第7回 衝撃の「ブーイング」体験〜スカラ座編

こんにちは、musicaです。
郵船トラベルの講師同行ツアー「バッハへの旅」「ヴェルディへの旅」
などでおなじみの、加藤浩子氏による特別寄稿、第7回目をお届けします。

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 こんにちは。加藤浩子です。
 「郵船トラベル」さんが主催するツアーで、同行講師をさせていただいています。
「郵船トラベル」さんのメールマガジンの場をお借りして発信している「加藤浩子の旅びと通信」、第7回目の今回は、イタリアでの「ブーイング」体験談をお届けします。


イタリアオペラの殿堂 スカラ座

オペラはやっぱり、イタリア。
そう思うことは、少なくありません。
歴史ある華麗な劇場。伝統的な舞台に豪華な衣装。明るく輝かしい「イタリアの声」。近年では経済難もあり、舞台の豪華さも歌手の層の厚みも以前ほどではなくなったとはいえ、イタリア人の美意識は、オペラにおいてもやはり特別です。
そして、観客の反応の面白さ。
イタリア人は一般的に日本人より喜怒哀楽がはっきりして感情表現が豊かですが、そのことはオペラハウスでもつくづく実感します。
歌や演奏が気に入れば「ブラヴォー!」、気に入らなければ「ブー!」。お気に入りのアーティストが舞台に現れれば歌舞伎俳優の贔屓筋よろしくかけ声をかけ、とびきりの熱唱にはやんやの喝采と、「アンコール」を意味する「ビス!」の声が渦巻きます。客席と舞台がひとつになり、劇場が生きている!と全身で感じることができる。それこそ、イタリアの劇場の醍醐味です。



イタリアの夏の音楽祭の代名詞、ヴェローナ音楽祭の会場となるローマ帝国時代の闘技場


オペラハウスでのかけ声といえば、誰でも知っているのは「ブラヴォー!bravo」でしょう。イタリア語の「ブラヴォー」は、「お上手」「よくできた」くらいの意味で、イタリアではごく日常的な言葉。お母さんが、子供を褒める際にせっせと使っていたりします。
ちなみにブラヴォーbravoは男性形で、女性形はブラーヴァbrava、複数形は男性がブラーヴィbravi、女性がブラーヴェbrave。けれど、文法通りに使い分けているのはイタリア人くらいで、他の国では男女単複問わずbravoで通しているのがふつうです。
 「ブラヴォー!」が飛び交う公演は楽しいものですが、イタリアではその反対の「ブー!」(=ブーイング)もしばしば押し寄せます。日本ではほとんど聞かれることがないので、現地で出くわすとなかなか衝撃的です。特にスカラ座では、忘れることのできない「ブーイング」を2回、経験しました。



スカラ座の客席とオーケストラピット


初めてブーイングの嵐に遭遇したのは、2004年のイタリア・オペラツアーの際にスカラ座で観劇したジョルダーノのオペラ《フェドーラ》の公演でのこと。ブーイングとはこういうものか!と思い知らされた、強烈な体験となりました。
当時はスカラ座が改修中で、アルチンボルディ劇場というところで公演が行われていました。モダンな劇場で、スカラ座公演の場所としては今ひとつ風情のない劇場ではあったのですが、プラシド・ドミンゴとミレッラ・フレーニという大スターが共演することになっていたので、チケットは早々に完売。ツアーのお客様の中にも、この公演が目当ての方が少なからずいらっしゃいました。
ところが公演の少し前に、フレーニのご主人のバス歌手、ニコライ・ギャウロフが亡くなったことを知りました。公演どころではないかもしれないと気を揉んでいたら、案の定、本番の数日前にキャンセル。そして本番直前に、何とドミンゴもキャンセルしてしまったのです。
呼び物のスターがキャンセルしても、公演が行われる限り払い戻しはしないのが、欧米のオペラ公演のスタンダードです(最近は日本でもそうなりました)。代役を立てて公演が行われることになったのですが、当然ながら観客は納得していません。その夜のスカラ座の客席には、開演前から何やらくすぶっているような空気が漂っていました。
代役の二人は健闘していた、と思います。とはいえ、ビッグスターのピンチヒッターですから、緊張するのは当たり前。ピッチが狂ったり、音が微妙に外れたり、といった瞬間があったのも確かでした。
第1幕の終了とともに、客席は爆発しました。主役たちがカーテンコールに現れた途端、ブー!の嵐。私が座っている右からも左からも、前方からも後方からも、「ブー!」が飛んできます。時折、歌手に同情するように「ブラヴォー!」の声が立ち上がるのですが、間髪を入れずに「ブー!」にかき消されてしまう始末。呆気にとられて、左右を見たり後ろを振り向いたりしてしまいました。客席に向かってお辞儀を繰り返す歌手たちの心情は、どんなだったでしょうか。とにもかくにも最後まで歌い切ったのは、立派だったと思います。
そんなわけで、この時の《フェドーラ》は、二大スターには会えなかったものの、別の意味で忘れ難い公演になったのでした。
その時、フレーニの代役に立ったソプラノ、マリア・グレギーナは、スカラ座を代表するプリマになり、いまも現役で歌い続けています。


2014年にスカラ座で行われた《シモン・ボッカネグラ》のカーテンコール


2度目のスカラ座でのブーイング体験は、2010年の春に観劇した、ヴェルディの《シモン・ボッカネグラ》の公演でのことでした。
ドミンゴがテノールからバリトンに転向したばかりの頃で、バリトンの大役であるシモンに初挑戦。しかも大病から復帰した再起公演でもあったので、これも話題沸騰の公演でした。指揮は、当時のスカラ座の音楽監督だったダニエル・バレンボイムです。
ブーイングの嵐は、歌手ではなく、指揮のバレンボイムに対して起こりました。低音を強調し、オーケストラを重々しく鳴らす彼の音楽作りは、ヴェルディというよりワーグナーのようだったのです。プロローグが始まって間もなく、「これはヴェルディじゃない」という違和感が、客席の一部に漂い始めたのが感じられました。何と言ってもスカラ座は「ヴェルディの劇場」なのですから、聴衆がヴェルディの演奏にうるさいのは当然です。
嵐は、休憩が終わった後に起こりました。バレンボイムがオーケストラピットに現れてこちらを向いた瞬間、「ブー!」が弾け飛んだのです。
さすがイタリア人!
次の瞬間、私も、そして私の隣にいた大のヴェルディファンのツアーメンバーも、口を手で囲んで「ブー!」を叫んでいました。記念すべき、ブーイングデビューでした。
 ところが、バレンボイムが凄かったのはここからです。彼は客席を睨みつけ、ブーイングと対決したのです。
何十秒だったのか、何分だったのか、記憶は定かではありません。けれど勝利したのはバレンボイムでした。時間の経過とともにブーイングは鎮まり、それを見届けると、バレンボイムはオーケストラの方に向き直り、音楽を再開したのでした。


ベルリン州立歌劇場


この時の《シモン・ボッカネグラ》は、ベルリンの州立歌劇場との共同制作だったのですが、ミラノに先だって行われたベルリンでのプレミエでは、バレンボイムの指揮が大喝采を浴び、フェデリーコ・ティエッツィの伝統的で美しい演出に、「何の工夫もない」とブーイングが出たそうです。
「演出」に込めたメッセージが重視されるドイツ(だから、ドイツのオペラハウスでは「読み替え」演出が多いのです)と、音楽、そして「美しさ」が重視されるイタリア。聴衆の好みの違いがよくわかり、これもまた、とても興味深い出来事でした。



ベルリン州立歌劇場の客席とオーケストラピット


この時の《シモン・ボッカネグラ》はDVD になっていますが、もちろん、ブーイングの嵐は収録されていません。だから、生は面白い。やめられません。

DVDの情報はこちらをご覧ください。

https://www.hmv.co.jp/en/news/article/1112220054/

劇場は生き物です。それに命を吹き込むのは、第一にアーティストやスタッフですが、同時に観客でもあります。生の公演は一期一会。だからこそ、足を運ぶ価値があるのです。



スカラ座の客席から眺めた舞台、開演前、照明が落ちた客席



スカラ座で見そびれたドミンゴとフレーニの《フェドーラ》ですが、1993年に二人がスカラ座で共演した時の伝説的な公演の動画が、youtubeに上がっていました。一部ですが、こちらからご覧いただけます。




 ところで、本文中でご紹介した《シモン・ボッカネグラ》は、14世紀に実在したジェノヴァ共和国の総督。貴族社会にあって、初めて平民から総督になった人物です。ヴェルディはこの作品に、彼の終生のテーマだった「父と娘」の愛と葛藤を盛り込みましたが、その背景には自身の私生活もあったようです。拙著『オペラでわかるヨーロッパ史』(平凡社新書)では、本作の歴史的背景と、ヴェルディの「隠された子供」について取り上げています。よろしければぜひご覧ください。

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投稿者名 musica 投稿日時 2020年08月05日 | Permalink

加藤浩子の旅びと通信 第6回 オペラゆかりの地を訪ねる醍醐味 その2〜《トスカ》の舞台をローマに訪ねる

こんにちは、musicaです。
郵船トラベルの講師同行ツアー「バッハへの旅」「ヴェルディへの旅」
などでおなじみの、加藤浩子氏による特別寄稿、第6回目をお届けします。

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こんにちは。加藤浩子です。
「郵船トラベル」さんが主催するツアーで、同行講師をさせていただいています。
「郵船トラベル」さんのメールマガジンの場をお借りして発信している「加藤浩子の旅びと通信」、第6回目の今回は、オペラ《トスカ》の舞台巡りにご案内したいと思います。


ローマのシンボル、ヴァチカンの聖ピエトロ寺院


前回、「オペラツアー」ならではの訪問地として、オペラや作曲家の「ゆかりの地」巡りのことをお話しし、マスカーニのオペラ《カヴァレリア・ルスティカーナ》の舞台となったシチリア島のヴィッツィーニ村を訪ねた時の想い出を書きました。

今回は、これも何度かオペラツアーに組み込んで好評だった、プッチーニの人気オペラ 《トスカ》の舞台をご紹介したいと思います。

 1900年にローマのコスタンツィ劇場(現ローマ・オペラ座)で初演された《トスカ》は、初演のちょうど100年前、1800年のローマを舞台にしたオペラです。


ローマ、オペラ座。1900年に《トスカ》が初演された


投稿者名 musica 投稿日時 2020年07月20日 | Permalink

加藤浩子の旅びと通信 オペラゆかりの地を訪ねる醍醐味〜《カヴァレリア・ルスティカーナ》ゆかりのシチリア島、ヴィッツィーニ村訪問記

こんにちは、musicaです。
郵船トラベルの講師同行ツアー「バッハへの旅」「ヴェルディへの旅」
などでおなじみの、加藤浩子氏による特別寄稿、第5回目をお届けします。

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こんにちは。加藤浩子です。
 「郵船トラベル」さんが主催するツアーで、同行講師をさせていただいています。
「郵船トラベル」さんのメールマガジンの場をお借りして発信している「加藤浩子の旅びと通信」、第5回目の今回は、オペラ《カヴァレリア・ルスティカーナ》ゆかりのシチリア島、ヴィッツィーニ村の訪問記です。


イタリアオペラの殿堂、ミラノのスカラ座


「オペラツアー」を組む目的は、いくつかあります。
最大の目的は、欧米の有名歌劇場で、いい公演を鑑賞することでしょう。
特にヨーロッパのオペラハウスは、建物自体に訪れる価値があります。劇場そのものが歴史的な建築物である場合も少なくありません。個性豊かな劇場の雰囲気を味わうだけでも、はるばる来てよかったと思えます。一回の旅で複数の国の複数の劇場を訪れることができるのも、ヨーロッパのオペラツアーの魅力です。
もちろん、一番大事なのは公演の内容です。有名スターが出演する人気演目から、実力派が揃う注目公演まで選択肢はいろいろですが、なるべく多くの方にご満足いただける公演を選ぶよう、心がけています。
さて、「オペラツアー」ならではのもう一つの目的は、オペラや作曲家の「ゆかりの地」の訪問です。
一般的な観光地ももちろん訪問しますが、ヴェルディやプッチーニ、モーツァルト、ワーグナーといった有名作曲家のゆかりの場所をめぐるのは、興味をそそられるもの。特に、その旅で鑑賞した作曲家のゆかりの場所だったりすると、感銘もひとしおです。
これまで訪れた「作曲家ゆかり」の場所の中で、一番印象に残り、繰り返し訪れているのは、ヴェルディが私財を投じて建てた音楽家のための老人ホーム「憩いの家」です。設立してから120年近くたった今でも現役の老人ホームとして使われており、スカラ座のオーケストラや合唱団のOBからフリーランスの作曲家や指揮者まで、音楽家として活躍した方々やその家族が老後を過ごしています。敷地内の礼拝堂には、ヴェルディ夫妻のお墓もあります。


音楽家のための憩いの家


投稿者名 musica 投稿日時 2020年07月03日 | Permalink

加藤浩子の旅びと通信 第4回  過ぎてみれば想い出深し、「トラベル」での「トラブル」

こんにちは、musicaです。
郵船トラベルの講師同行ツアー「バッハへの旅」「ヴェルディへの旅」
などでおなじみの、加藤浩子氏による特別寄稿、第4回目をお届けします。


ドレスデンに建つザクセン州立歌劇場


こんにちは。加藤浩子です。

「郵船トラベル」さんが主催するツアーで、同行講師をさせていただいています。
「郵船トラベル」さんのメールマガジンの場をお借りして発信している「加藤浩子の旅びと通信」、第4回目の今回は、旅につきものの「トラブル」のお話です。

同行させていただいている音楽ツアーが2000年の「バッハへの旅」にはじまった、
というお話を第1回でいたしましたが、翌2001年は、この年没後100年を迎えた
イタリア・オペラの大作曲家ヴェルディを訪ねる「ヴェルディへの旅」を催行しました。
まだ、阪急交通社さんにお世話になっていた時代です。

2005年からは「郵船トラベル」さんの主催で音楽ツアーを続けていますが、
同行ツアーの柱は、「バッハへの旅」と、ヴェルディをはじめとするイタリア・オペラを中心としたオペラツアーです。
今回は、オペラツアーのこぼれ話です。

さて、旅には「ハプニング」がつきものです。嬉しいハプニングに越したことはないですが、
「トラブル」に巻き込まれることもしばしば。けれどトラブルというものは、その時は困っても、振り返ってみれば「いい想い出」になることがよくあります。
不思議なもので、トラブルを乗り切った旅の仲間は、結束が固くなることが多いのです。
「あの時は大変だったね〜」と語り合うのは、それはそれでとても楽しいもの。
そして、トラブルを乗り切った後に、嬉しいハプニングがあったりすれば最高です。

私にとってとても想い出に残っている「トラブル」ありの「トラベル」は、2008年に催行したオペラツアーでした。題して「ヨーロッパ名門歌劇場めぐり」。ドイツ、ドレスデンのザクセン州立歌劇場で《リゴレット》、ロンドンのロイヤルオペラハウスで《ドン・カルロ》と《フィガロの結婚》、そしてブリュッセルのモネ劇場で《運命の力》を鑑賞するという内容です。


ザクセン州立歌劇場内部


ザクセン州立歌劇場内部


投稿者名 musica 投稿日時 2020年06月18日 | Permalink