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前から見るとイケメン、後ろ姿は絶世の美女?

 日本人なら誰しも親しみを感じる観音様とはどのようなお方なのでしょう?正式には観音菩薩と言われることが多く、観音(人々の声を広く聞き、見る)菩薩(修行中の仏さま)を表しています。あまねく人々を1人残らず救いたいと誓願を立てられ、如来(会社でいえば経営者)の資格があるにもかかわらず、あえて菩薩(会社でいえば営業担当者)の姿にとどまり、衆生(会社で言えば得意先)のレベルに応じて33の姿に変身するそうです。


国宝十一面観音菩薩立像(写真提供:渡岸寺観音堂/向源寺)

 菩薩はお釈迦様の姿がモデルだと伝わっています。王族の王子様に相応しく、ネックレスや王冠、イヤリングなど金銀宝飾品を身に着け、きらびやかな衣装をまとっています。社長室の奥にいる経営者には近寄り難いものですが、絶世の美女やジャニーズ系のイケメンに変身して営業に来たら・・・ついつい商談に応じてしまう、というのが狙いかどうかは定かではありませんが、偉そうな上から目線の立ち振る舞いを嫌い、常に悩める人々に寄り添う、というのが菩薩の営業スタイルなのです。

 いろいろなお姿で現れる観音様ですが、中でも十一面観音は頭に10もしくは11ものお顔を持っています。360°見逃さないというやる気満々の仏様の姿です。観音様というと「優しい」イメージをお持ちかと思われますが、この11のお顔の中にはどう考えても怒っている(憤怒相)お顔もあります。これは愛情深い母親が悪いことをした子供を叱るように、時には厳しく指導する、という姿でもあります。そして何よりの恐ろしい表情は真後ろにある「暴悪大笑面(ぼうあくだいしょうめん)」。


十一面観音立像の後ろ姿、色っぽい・・・

 あまりに恐ろしいお顔の為、ここではアップで画像をご紹介しませんが、悪への怒りが極まるあまり、「悪いことはみんなお見通しだ、ばかばかしい! わっはっは」と人の悪行について大口をあけ歯を見せ、笑い飛ばす表情は強烈なインパクトです。他人にはバレていない悪事も観音様には隠せない、ということでもあるのです(気を付けましょう・・・汗)。

 日本の国宝に指定された七体の十一面観音立像の中で最も美しいとされるのが長浜市、高月町の観音の里にある渡岸寺観音堂(向源寺)の観音像です。郵船トラベルが贈る2021年3月28日発「奥琵琶湖のオーベルジュ“ロテル・デュ・ラク”連泊と若狭海の幸、桜満喫の旅」では3日目にこの国宝十一面観音立像を拝観します。

 
 正面のお顔はイケメン、後ろ姿は色っぽい美女の姿で、新しい観音堂に収蔵されたため、像を一周して後ろ姿も拝観することができるようになりました。日本文化や古美術に深い洞察を持つ白洲正子も魅了された観音様は一度は見るべきお姿です。 

すらりとした長身もさることながら十一面の化物(けぶつ)を、重たげにいただいた姿は媚しく、蓮のうてなから、一歩踏み出さんとする動きには、こぼれるような色気がある(白洲正子 西国巡礼より)


投稿者名 emix 投稿日時 2021年02月06日 | Permalink