ウポポイってどんなところ?北海道を旅してアイヌの文化に触れてみませんか
もし、まだ出会ったことのない民族の住む地を訪れ、言葉を知ろうとしたら、あなたならどうしますか。彼らは他の民族を知らず、警戒心も強く容易には近づけなさそうです。手元にはノートと鉛筆しかありません。
明治40年(1907)、25歳の青年は単身樺太(サハリン)に渡り、途方に暮れていました。彼の名は金田一京助、国語の教科書でおなじみの日本を代表する言語学者です。目的は樺太アイヌ語の語彙を収集すること、ですがアイヌの大人たちは易々と近寄ってきてはくれません。
言語学者として最も知りたい言葉は・・・「これは何?」。この一言さえあれば何もかも知ることができます。そこで彼は子供たちが遊んでいるところへ行って、ノートを拡げて絵を描くふりをします。最初は風景画のようなわかりやすい絵を描きました。子供達は興味津々、でもなかなか近づいてくれません。そして新しいページに出鱈目な線をぐるぐると描いたのです。すると、年長の子供が近づいて来て「ヘマタ?」と言うのです。他の子供達もやって来て、口々に「ヘマタ?」「ヘマタ?」と叫びます。これで、「ヘマタ?」は「何?」を表わす言葉ではないかと見当が付いたのです。
そして、金田一青年はこの「ヘマタ」という言葉をきっかけに多くの語彙を収集し、日本で最初のアイヌ語の言語学者となるのですがこのお話、どこか記憶にありませんか。このエピソードは昭和25年(1950)に発表された『心の小径』という随筆に描かれた一節で国語の教科書にも採用されました。
北海道の市町村名の約80%はアイヌ語が語源だとご存じでしょうか。誰しも知る札幌(サッ・ポロ・ペッ=乾く・大きな・川)、室蘭(モ・ルラン=小さい・坂)、小樽(オタ・オル・ナイ=砂・融ける・川)、知床(シリ・エトク=地の・突出部)など枚挙にいとまがありません。これらは元来、地形を現す言葉でそのまま地名になりました。他にはピリカ(良い、美しい)、ノンノ(花、女性誌の名前に採用)も良く知られています。そして私たちが知るアイヌの言葉で日常的に使われているのが魚卵を持った一夜干しが絶品の「シシャモ(ススハム=柳の葉)」。
日高山脈を源とし、南西に流れる鵡川(むかわ)にはこのようなお話が伝わっています。ある日、天の国の雷の神カンナカムイの妹が鵡川と沙流川の水源地のシシリムカ・カムイヌプリに降り立ったところ、川下にあるどのコタン(集落)からも煮炊きする煙が立っていません。アイヌの人々は食べ物がなく、飢えに苦しんでいたのです。神々は相談をし、柳の葉をススハム(ししゃも)として命を与え、鵡川に流したのです。そのおかげで人々は飢えから救われました。
この伝説は日本書紀に記載された「人家の竈(かまど)から炊煙が立ち上っていないことに気づいて3年間租税を免除した仁徳天皇」の逸話に通ずるように思えます。徳のある行為とは常に困難に窮した人に寄り添うということなのかもしれません。
アイヌ民族はカムチャッカ、千島列島、樺太、北海道に広く居住する先住民族。「アイヌ」は人間を意味し、生き物や事象のうち人間にとって重要な働きをするものを「カムイ」と呼び、それらには心(霊魂)が宿るという汎神論的な考えを持っています。文字を持たないため生活の知恵や歴史は口伝で継承され、ユーカラ(叙事詩)などの歌謡と、ウエペケレ(昔話)などで伝えられてきました。そのため金田一京助のアイヌ語研究により彼らの文化への理解が深まったようです。
元々北海道を中心に居住していたアイヌの人々は時代も遷り、現代は北海道のみならず日本各地でも生活しています。そして、口伝により継承されてきたアイヌの伝統工芸や文化は伝承者の減少により存続の危機にあります。
そんな中、ウポポイ(民族共生象徴空間)は2020年7月、アイヌ文化を復興・発展させる拠点として北海道の白老町(しらおいちょう)に開業しました。広大な敷地はエゾジカやキタキツネが生息するポロト自然休養林に囲まれポロト湖畔に面した素晴らしい自然環境です。ウポポイにはアイヌ民族の歴史や文化を紹介する「国立アイヌ民族博物館」のほか、「国立民族共生公園」に様々な体験型プログラムを実施する施設が点在しています。
アイヌ伝統芸能を上演する「体験交流ホール」、アイヌ料理の調理や試食、伝統楽器の演奏体験ができる「体験学習館」、アイヌの伝統的な生活空間を体感できる「伝統的コタン(集落)」では囲炉裏の温もりを感じながらチセ(家屋)の内部を見学することができます。この他にもアイヌの食文化を楽しめるレストランや伝統工芸品を販売するショップなど、誰でも楽しめる充実の設備を誇ります。
コロナ禍で開催された東京2020オリンピックでは多様性がテーマとなりました。ここウポポイでアイヌ文化に触れ、先住民族の尊厳を尊重することや多様で豊かな我が国の文化について、改めて感じられてはいかがでしょうか。それではウポポイのPR動画をご覧ください。
いかがでしたでしょうか。ウポポイに訪れてみたくなったのではないでしょうか。ぱしふぃっく びいなすでは初夏に二つの日本一周クルーズを実施し、いずれもウポポイへのオプショナルツアーを予定しています。3月31日(木)までのご予約でお得な早期申込割引が設定されている人気クルーズですので、お早目のお問合せをお願いいたします。
●5/9(月)▶5/18(水) 神戸発着 風薫る日本一周クルーズ 10日間
神戸~下関~佐世保~<隠岐周遊>~富山~秋田~室蘭~清水~神戸
●5/31(火)▶6/9(木) 横浜発着 初夏の日本一周クルーズ 10日間
横浜~白老~青森市~<輪島沖花火海上鑑賞>~輪島~境港~門司~高松~横浜
ぱしふぃっく びいなすの新型コロナウイルス感染症予防対策についてはお客様の安心、安全のため万全の体制を取っています。乗客数の制限を行っておりますので当面の間、ステートルームJの販売は休止いたします。
原則として、ご乗船に際し、日本国内で承認された新型コロナウイルスワクチン接種をお済ませ下さい(2回以上接種し、かつ直近の接種日から15日以上が経過していることが必要です)。
接種完了していないお客様は、乗船日の3日前~乗船日前日にお客様ご自身の手配にて民間または医療機関のPCR検査を受検下さい。また、ご乗船のお客様全員、乗船当日のPCR検査をお受け頂きます。詳細は郵船トラベルにお問合せ下さい。
※参考文献・出典
金田一京助全集14(三省堂1993年)
藤本 英夫(著)金田一京助(新潮選書1991年)
アイヌ語の地名(北海道庁環境生活部アイヌ政策推進局アイヌ政策課)
シシャモの伝説(鵡川漁業協同組合)
※協力
ウポポイについて (公財)アイヌ民族文化財団 民族共生象徴空間運営本部
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