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~いざ、幽玄の世界へ。能楽堂での能に浸るひととき~ にっぽん丸は一味違う芸術の秋へ誘います。



 オペラに歌舞伎、自然の中や社寺でのスペシャルコンサート、いつも斬新な企画で新鮮な驚きと感動を与えてくれるにっぽん丸のエンターティメント、今回は和をテーマにした芸術の秋にふさわしいクルーズが実施されることになりました。
 2022年11月19日(土)▶11月22日(火) 4日間 
 横浜~高知(停泊)~横浜
 にっぽん丸 伝統芸能 お能クルーズ 


新熊野神社の本殿(京都市東山区)

 秘すれば花なり。秘せずば花なるべからず
室町時代に活躍し、猿楽(当時の大衆演芸)を洗練された能に大成した「世阿弥」の芸論書『風姿花伝(ふうしかでん)』に書かれた有名な一節です。
 鬼夜叉という物騒な幼名を持つ少年は12歳にして猿楽師の父が率いる大和猿楽「結崎座」に演者として出演していました。ある日の巡業場所は京都の新熊野(いまくまの)神社、父の観阿弥とともに獅子舞いを奉納、その優雅な舞いは鑑賞に訪れていた当時17歳の若き征夷大将軍、足利義満の心を一瞬にして虜にしたそうです。才気に溢れ、絶世の美少年であった世阿弥は義満の寵愛を受け、貴族の好む文化、芸術(和歌、連歌、香道、きき茶など)を学び、教養と洗練を身に付けていきます。

 「秘すれば花」とは芸には秘事があり、一般公開しないので価値が上がるというような意味となります。観客が最初から驚きを期待するアクロバティックな猿楽とは異なり、奥が深く、慎ましやかな中に意外性のある演出を取り入れるからこそ観客に感動を与えることができる、そしてこれが能の「ブランド化」に繋がっていくのです。


 今風に言うと世阿弥の考えた能のブランド・コンセプトは「幽玄」。広辞苑によるとこのように記載されています(一部抜粋)。
【幽玄】奥深く微妙で、容易にはかり知ることのできないこと。また、あじわいの深いこと。情趣に富むこと。能楽論で、強さ・硬さなどに対して、優雅で柔和典麗な美しさ。
 幽玄の例としては少年(子方)が能面をつけないで舞台にいる姿や鬼の演目でも写実ではなく美しく舞うことなど。世阿弥は謡(うたい)、舞、楽器、豪華な装束や面(おもて)などの各要素の美が結集した能の神髄を「口伝」とし、家元制度にしたので幽玄の神秘性が増したと言われています。

 なんだか小難しく思ってきた?・・・そんなことはありません(汗)、能も観客を楽しませるエンターティメントのひとつ、それではクルーズファンの皆様に、楽しく鑑賞していただくコツをご案内させていただきます。



 能は元来野外で行われ、お寺や神社の境内に能舞台があり、夜にかがり火を焚いて上演する「薪能(たきぎのう)」が基本スタイル、現在のような屋内の能楽堂は明治以後に登場したそうです。今回は高知県立美術館内にある能楽堂での鑑賞となります。
 舞台の正面の羽目板「鏡板(かがみいた)」には老松と呼ばれる松の絵が掲げられていて、舞台から左側には「橋掛かり」という廊下がのびています。舞台に緞帳はありません。


能楽堂(一例)

 いよいよ能が始まります。まず演奏担当の「囃子方(はやしがた)」が左手より登場、正面奥に並びます。そして「地謡(じうたい/物語を歌で盛り上げる合唱団)」が右側に座ります。
 今回は世阿弥の甥の子供、観世信光(かんぜのぶみつ)作とされる「船弁慶(ふなべんけい)」の後段が上演されるとのことで、どんな様子か見てみましょう(出演者は予定です)。
※シテ(主役)、ワキ(相手役)、ツレ(シテまたはワキの関係者)、子方(子役)、アイ(間狂言)。今回の義経役は、子役ではなく女性が演じる予定です。


平知盛の怨霊を追い払う弁慶と義経(鍬形蕙斎)
メトロポリタン美術館蔵

半能「船弁慶」
■演者
シテ(平知盛)・・・・・・・・宝生和英
子方(源義経)・・・・・・・・葛野りさ
アイ(漁師)・・・・・・・・・・山本則重
ワキ(武蔵坊弁慶)・・・・村瀬提
ワキツレ(義経従者)・・矢野昌平
■囃子方
笛  小野寺竜一
小鼓 田邊恭資
大鼓 大倉慶乃助
太鼓 澤田晃良
■地謡
大友順、亀井雄二、藤井秋雅、石塚尚寿


 チラシの「あらすじ」にある通り、頼朝の追手から逃れるため大物の浜(現在の尼崎)で静御前と別れた義経は弁慶とともに船に乗ります。すると、鎌倉軍に追い詰められ壇之浦で入水した平知盛(平清盛の四男)の怨霊が現れ激しい嵐が起こります。
 大道具は船の形をした骨組みのみ、能は究極の「省略を美とする芸術」なので小道具や背景の変化はありません。お囃子やバックコーラスで嵐を表現し、目の前に荒れる海が広がり、怒り狂った怨霊が襲い掛かる様を観客に想像させます。

 能の演目は200以上、貴族や武士と言った人間だけではなく、神、鬼、亡霊、妖怪、天女など異界のものたちが登場します。権力に虐げられたり、弱い立場に追いやられた者たちへの鎮魂の意味もあり、演者は面(おもて)を付けることにより、それらになりきり、あたかも憑依されているかのような摩訶不思議な世界に我々を誘います。言うなれば、能はこの世と異界のものたちを繋ぐ橋渡しを担っているのかもしれません。夜に薪の灯りだけで行われていた能、かなり怖いですよね。でも、これが能の醍醐味と言っても過言ではありません。 


にっぽん丸の和食ディナー(一例/イメージ)

 愛好者はともかくとして、日常的に能を鑑賞する機会は少ないかと思われます。今回は3日目の午後、ご希望の方全員を能楽堂にお連れします。ふたつの能を上演し、いずれも馴染み深い義経と弁慶の物語です。
 言葉がわからなくとも、絢爛豪華な能装束、能独特のハコビ(すり足での歩行)やカマエ(基本姿勢)などをご覧になるだけでもお楽しみいただけるかと思います。もしかすると能の魅力に「嵌る」かもしれません。

 本クルーズは和をテーマに、初の試みとして3回の夕食はすべて和食、土日が含まれている参加しやすい日程です。ぜひ、この機会に和のおもてなしと能の鑑賞を楽しんでみてはいかがでしょうか。


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投稿者名 emix-remix 投稿日時 2022年10月17日 | Permalink