シドモア桜〜ポトマック河畔からの里帰り桜〜

みなとみらい線の元町・中華街駅元町口を出た堀川の谷戸橋の袂に一本の桜の木が植えられています。「シドモア桜」と書かれた説明板には、アメリカ人の紀行作家、エリザ・R・シドモア女史の写真とともに桜の由来が紹介されています。


谷戸橋の袂のシドモア桜

谷戸橋の袂のシドモア桜

シドモア女史は1885年頃日本に滞在中桜の美しさに魅了され、アメリカに帰国後は母国でも桜並木のすばらしさを再現したいと3年の長きに渡り尽力され、ようやく東京市からワシントン市へ日米友好の桜の苗木が寄贈されたのです。その桜はポトマック河畔一帯に植えられ、今では世界的な桜の名所になりました。その苗木6,040本を輸送したのが日本郵船の「阿波丸」でした。


ポトマック河畔の桜の苗木を運んだ阿波丸(写真提供:日本郵船歴史博物館)

ポトマック河畔の桜の苗木を運んだ阿波丸(写真提供:日本郵船歴史博物館)

一度目の輸送では苗木が害虫に感染して焼却処分となり失敗、2度目の輸送では苗木が万全の体制で育てられ、ようやくシアトル経由で無事ワシントンに届けられたのです。日米友好の架け橋としての寄贈に心を打たれた当時の近藤廉平社長は運賃を無料にしてこの事業を支援したと日本郵船社内報の「航跡」欄に記されています。


シドモア桜説明版

シドモア桜説明版

シドモア女史は今、横浜の山手外人墓地に眠っています。そのポトマック河畔の桜が1991年に里帰りし、シドモア桜の会によってシドモア女史の墓碑の傍らに植えられました。このエピソードを伝えるためその桜から接ぎ木によって苗木が作られ、外人墓地へと続く道の袂に植えられました。春になると桜の花を咲かせ、シドモア女史の偉業を今に伝えています。


投稿者名 影の横浜情報屋 投稿日時 2014年04月02日 | Permalink