十字架に刻まれた謎の文字 [天草を巡る その6]


サンタマリア館〈画像提供:熊本県〉

天草市有明町の「サンタマリア館」(現在閉館中)の外に立つ十字架とマリア像。
この十字架には不思議な文字が刻まれています。

「さんしやる二 こんたろす五
くさぐさの でうすのたから しずめしずむる」

いかがでしょう?
ミステリーファンならずとも興味をそそられるのではないかと思います。

なにしろ天草四朗ゆかりのこの地のこと。天草の乱で天草四郎率いる一揆勢は全滅しましたが、やがて「3万7千人もの一揆勢を動かし養うための相当な軍用金が必要だった筈」と天草四朗の財宝の伝説がささやかれるようになりました。その財宝の隠し場所を記した地図があるとされ、なんと財宝を追って謎の死を遂げる者さえいたといいます。
「もしかしたら、この文字が天草四郎にまつわる軍資金(埋蔵金)の隠し場所を刻んだ暗号かもしれない」と『金田一少年の事件簿』ファイル22「天草財宝伝説殺人事件」のもとネタにも使われました。

ちなみに現在ではこの言葉の謎は解明されていています。
この言葉は天草に残るキリシタンのオラショ(祈り文)のラテン語の一部で、「さんしやる」の「さん」は「聖なる」というラテン語の接頭語で「サンシヤル」とは「聖なるもの=聖遺物」のこと、「こんたろす」はロザリオを意味するポルトガル語「コンタルス」のこと。
「さんしやる二 こんたろす五」とは「聖遺物が2個、ロザリオが5個」という意味で、続く「くさぐさのでうすのたからしずめしずむる」は「種々(くさぐさ)のデウスの聖遺物やロザリオをここに沈め、鎮めた」と解されました。

この時代に短歌に読み込まれるほどにラテン語やポルトガル語が使いこなされていたとは驚きですね。

サンタマリア館は2017年11月に惜しまれながら閉館しました。 貴重な資料は2018年4月より、上天草市のメモリアルホールで展示予定とのことです。


投稿者名 陸(おか)船長 投稿日時 2018年01月30日 | Permalink